家族アルバム みてねが提唱する「CXE」の業務とは?深掘りして見えてきた、サービス開発“以外“をサポートする魅力

2023/8/29

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2016年にGoogleが提唱を始めた、日本語で”顧客信頼性エンジニアリング”を意味するCRE(Customer Reliability Engineering)。ユーザーの抱える不安を技術面からサポートし、解消するために生まれたこの専門職についてご存じの方は多いのではないでしょうか。

家族アルバム みてね(以下みてね)には、このCREを内包し、顧客体験を総合的に支えることをミッションとした『CXE』という名前のエンジニアリングチームが存在します。

今日はCXEグループ リーダーの原田を迎え、みてねでのCXEの位置付けや実践する3つのカルチャー、そしてどんな方がCXEとして活躍できそうかなどについて深掘りしました。

必要とされた場所でフレキシブルに活躍

──さっそくですが、「CXE」という組織について詳しく教えていただけますか?

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原田:CXEという名前で活動する組織はおそらく他社にないので、初見ではどんなことをやっている組織なのか分かりづらいですよね。CXEは「Customer Experience Engineering」の略称で、簡単に言うと顧客体験を総合的に支える組織です。みてねでは、カスタマーサクセス(以下CS)やアプリ内プロモーションを始めとしたユーザーコミュニケーション領域のような、ユーザー様との直接的な接点における課題を技術で解決する組織として位置づけられています。CREの要素を含みつつ、マーケティング領域の課題も解決するような組織ですね。

──原田さんはどのような経緯で「CXEグループ」にジョインされたのでしょうか?

原田:自分は2006年、SNS「mixi」(以下mixi)がこれからまさに伸びていくぞ!という時にモバイル版 mixi の開発のためにミクシィ(現MIXI)に入社しました。ジョイン当初はエンジニアが自分だけでしたが、人数が増えたタイミングでチームリーダーを経験し、スマホ版 mixi の開発でもチームリーダーを務めました。その後異動してゲーム開発に携わり、ある程度開発が落ち着いたタイミングで、新規事業を多く立ち上げているVantageスタジオのエンジニア採用人事を受けもつことに。

そこではエンジニア採用と、スクラムマスター的な立ち位置での新規事業の開発支援を兼任していたのですが、そのうち本格的に新規事業開発に携わることになりました。2つの新規事業の立ち上げとサービスクローズを経験したところで「みてね」に声をかけていただき、2022年にCXEグループへジョインしました。

──さまざまな役割を担当されてきた中でも、異色なのが採用人事としての経歴だと思います。なぜ採用人事を担当することになったのでしょうか?

原田:当時Vantageスタジオ専任の採用人事が1名だけで、その方がエンジニア採用に関する知識があまりないとのことだったので、手が空いたタイミングの自分に声をかけていただいて。それから新規事業のエンジニアが1人体制で手が回っていなかったので、インフラ環境の構築を手伝ううちにいつの間にかエンジニアに戻っていたような感じですね。

──なるほど。必要とされた場所で、フレキシブルに活躍されることが多かったんですね。

CSとユーザーコミュニケーションの課題を技術面でサポート

──CXEグループの具体的な業務内容についても教えていただけますか?

原田:CREの側面では、ユーザー様からのお問い合わせのうち技術的な調査が必要なものを受け持ったり、CSグループが使う管理画面をより使いやすい形にアップデートしたりするなど、CSにおける課題を技術面からサポートしています。

ユーザーコミュニケーションの領域においては、アプリ内プロモーションのひとつであるプッシュ通知の送信基盤や、指定日時に自動でプッシュ通知を送るツールなどを開発しています。

──ユーザーとの接点における課題を解決することで、顧客体験の向上に寄与するような組織なんですね。現在注力して取り組まれていることはありますか?

原田:まずCREの側面でいうと、CSスタッフの負担を減らすこと、そしてそもそもお問い合わせをしなくても快適に「みてね」を利用可能な状況にすることを理想としています。その一歩として、まずはCS現場の課題を見つけるために実際の作業現場を見せていただき、そこで見えた課題を1つずつ地道に解決しています。

たとえば直近では、写真プリントやフォトブックなどの商品の製造工場とやり取りをするための管理画面を開発しました。これにより商品の不具合などの情報がデータベースの中に蓄積されるようになり、さらにお問い合わせ対応が楽になったと聞いています。このような課題はまだまだたくさんあるので、より楽に作業が進められるように改善を進めていきたいです。

ユーザーコミュニケーションの側面では、プッシュ通知を送信した後の効果測定まで可能な集計基盤を開発しています。現時点ではプッシュ通知送信後に「この通知のおかげで購買数が伸びたね」と根拠を持って言えるほどの数値は取れていないので、各プッシュ通知がどのくらい購買につながったのかをきちんと計測できる集計基盤を作ろうとしています。

CXEが体現する3つのバリュー

──仕事の進め方に関してはどうでしょうか。こちらの記事で挙げられている、CXEの3つのバリューを常に意識されている?

原田:言語化されたバリューのようなものは、ある程度メンバーが増えてきた時の意思統一のために必要なものだと考えていて。現在CXEグループのメンバーが自分含めて2名なので、常に意識しているわけではないですが、しっかり体現できているとは思います。

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まず『オープンコミュニケーション』、これは特に意識せずとも上手くいっていると思っているのが正直なところです。二人とも認定スクラムマスターの資格を持っているので、仕事の進め方の息が合うのもひとつの要因かもしれません。

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『”Why”を知る』という観点では、場当たり的な対処ではなく根本的な原因を突き止めて解決するように努めています。たとえばCSの方に「管理画面に◯◯な情報を追加してほしい」という相談をいただいた時に、なぜその情報が必要なのかをヒアリングしてみると、すごく面倒なオペレーションが存在していて、その中でその情報を必要としているということが発覚したりするんですよね。そこまで深掘りすると「そもそもそのオペレーションを無くすにはどうしたらいいか」など、また違った解決策を見出すことも可能になるので、日頃から割と意識しているポイントかもしれません。

──ただお願いされた作業をこなすのではなく、真の課題を見つけて解決に導くコンサル的な側面もあるんですね。そういった関わり方をしてもらえると依頼する側もすごく助かると思います。

原田:そうですね、特にもう一人のメンバーの中森さんが上手な領域だと思います。また、現在CSスタッフの方々とも良い関係性を築けているので、雑談的なところから本質的な改善につなげていくような動き方も多いですね。SlackでCSの方々が「これってどういうことなんだろう」と会話しているのを見たら、自ら会話に入っていくようにしています。

最後の『スピードは価値』については、ユーザー様からのお問い合わせ対応に関する依頼を受けたら、今やっている仕事を置いて最優先で対応するように心がけています。実は以前みてねにいたEMの方にタスクの優先順位について質問したことがあって。その時に「今困っているユーザー様がいるなら、まずはその悩みを取り除くことを何より優先しましょう」というアドバイスをもらって以来、すごく大切にしている価値観です。

サービス開発とは違う側面から事業に携わることができる

──CXEという役割は、みてねのサービス開発以外の部分を支える頼もしい存在だと感じているのですが、原田さんはCXEのどういったところにやりがいを感じられているのでしょうか?

原田:やはり、目の前の人に喜んでもらえるというのが大きいですね。自分が開発したもののユーザーが同じチーム内にいて、何か作業したら「便利になった!」「楽になった!」という声を直接もらえる環境なので、それがモチベーションに繋がっています。

──なるほど。CXEは、人に喜んでもらえることがモチベーションになるような方に向いているのでしょうか?

原田:そうだと思います。ただ、CXEは花形ではないんですよね。自分でバリバリ開発したサービスを世界中の方に使っていただく‥みたいなところにモチベーションを感じる方だと少し違うかもしれません。花形ではないけれど重要な仕事だということを理解して、モチベーション高く取り組んでいただける方に向いているんじゃないかと思います。

ちなみに自分自身は、直前に2つの新規サービスの開発とクローズを経験したのですが、急成長中のサービスってどんな感じだったっけ?とちょうどもう一度味わいたくなっていた頃にみてねでCXEを募集していて。自分の作ったものが表にでるようなサービス開発をしたくないわけではないですが、今はサービス開発に奮闘していた時とは違う側面からサービスを見たいと思い、CXEという仕事にやりがいを感じています。

──サービス開発を経た先で、今度はまた違った形でサービスに関わってみたいという方におすすめできそうですね。

ユーザーの声を大事に。顧客満足度と売上の両立を目指す

──最後に、今後の展望について教えてください。

原田:AI的な要素をお問い合わせに取り入れられないかと各方面から言われておりまして。たとえば他社だと、ユーザーの質問にチャットボットが答えてくれるようなサービスがあるじゃないですか。必ずしもチャットボットを使うことが妙案とは思いませんが、導入することで定型文を返信するだけで解決するようなお問い合わせへの対応は効率化できるんですよね。

また、お問い合わせの対応にChat-GPTのような技術を適用することで、展開中の7言語すべてに簡単に対応できるようになるかもしれません。これらのAI技術の活用によって、かなりCSの方々の負荷が下げられると思うのですが、なかなか効果の検証まで進められていないというのが現状です。

──「AIアシスタント的なやり方を妙案とは思わない」のは、なぜでしょう?

原田:自分自身がそれで何か問題を解決したという経験が無いからです。ただ、現在CSの方々がユーザー様に提供しているような体験を、そのままAIチャットボットでも提供できるのであればぜひ活用したいと思います。これまでいただいたお問い合わせへの回答などを学習させることで、精度が高く顧客満足度を保てるような返信が可能になるんじゃないかと、うっすら考えているところです。

──人のあたたかみを残したまま、AIも活用していければ最高ですね!ユーザーコミュニケーションに関しては?

原田:先ほどお話したような集計基盤の整備が急務だと感じています。いくらプッシュ通知で「写真プリントを使ってみませんか?」とメッセージを送っても、使わない方はおそらくずっと使わないんですよね。そういった方に何度も同様のメッセージを送ってしまうと、それが嫌になって他のサービスに移ってしまうかもしれない。プッシュ通知のデータ集計基盤を整備することで、どういった方が写真を購入して、どういった方が購入しなかったのかという情報が分かるようになるので、購入しない方にはしつこくお知らせしないという選択を取れるようになります。

──ユーザーが嫌がることをしない、ということを大切にされているんですね。

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原田:そうですね。もちろん売上も大切ですが、みてねでは顧客満足度をすごく重要視しています。たとえば「夜中にプッシュ通知が飛んできた」というお問い合わせがあれば、すぐにマネージャー陣にエスカレーションされるような大きな問題として扱われていますね。

また、特に海外のユーザー様は内部プロモーションであっても広告は広告だという認識を持たれていて。みてねは広告無しですよと謳って利用していただいているので、内部プロモーションに対するクレームが入ることもあります。みてねはそれが意見として取り入れられる環境ですし、顧客満足度と売上の両立を目指すカルチャーがあるので、集計基盤を活用することで、さらにユーザー様に快適にアプリを使っていただけるよう今後も尽力していきたいです。