新プロダクト開発部部長が目指すのは「スクラムでは遅すぎた」と言える未来
2023/3/24
2023年3月。「家族アルバム みてね」の組織はみてね事業部という1つの大きなチームから、事業開発部、マーケティング部、そしてプロダクト開発部の3つの部へと体制を移行しました。
プロダクト開発部の部長に就任したのは、複数社でエンジニアや組織改革リーダーとしての経験を積んだのち、昨年秋にMIXIへ「再入社」をした元2011新卒社員の平田 将久(通称KAKKA)です。
本インタビューではKAKKA本人に、今回のポジションをオファーされた時の正直な感想や、みてねの開発チームをより良くするために現在取り組んでいる施策、目指す未来などをお聞きしました。
複数社でスクラムマスターとしての経験を積み、大企業のDX化に尽力
━━KAKKAさんはミクシィ(現MIXI)にエンジニアとして新卒入社された時(2011年)からスクラムマスターをされていたようですが、初めはどのようにしてスクラムに興味を持ったのでしょう?
KAKKA:入社当時はウォーターフォール開発でした。ある日全社的にアジャイルな組織に構造変革するぞ!と号令がかかり、スクラム開発がスタンダードになったんです。
当時はみんなで勉強から始めていこうというタイミングだったのでポジションが空いていて、自分から積極的に手を挙げました。MIXIでは3チームへのスクラムの導入を経験して、チームをより良くすることでプロダクトビジョンに向かうスピードが上がると確信できました。
━━そこでスクラムが持つ効力を確信されたんですね。MIXI退職後から、再度入社されるまでの道のりについても教えていただけますか?
KAKKA:次の職場でもエンジニアとして働きつつ、入ったチームでスクラムが上手く機能していなかったので一から導入し直しました。結果的に外部からアジャイルコーチが見学に来るぐらいの良いチームに育ち、今でも目指すべきチームの形として頭にインプットされています。
━━その時は、どういった点が評価されたんですか。
KAKKA:いい質問ですね。シンプルに言うと、自律的に動いてる組織で、職能の領域を超えて、お互いに協力し合うような雰囲気のいいチーム。常に自分たちで設定した1スプリントのゴールについて妥協せずコミットして、リリースまでこぎつけられるようなチームです。もちろん、スクラムのルールをきちんと守ろうとする姿勢があった上での話ですが。
━━職種の垣根がなく、みんなで1つの目標に対して取り組まれているチームだったんですね。次の職場はシリコンバレーのスタートアップだったとのことですが。
KAKKA:その通りです。次に働いていたシリコンバレーのスタートアップでは、組織が大きくなるにつれアジャイル感が失われていく感覚があって。アジャイルなマインドセットを持った人たちが集まっているはずなのにおかしいぞ‥というところから組織構造とアジャイルなカルチャーの関係性を勉強したり、LeSS(Large-Scale Scrum)を参考にクロスファンクショナルなプロダクト組織への変革を行ったりしました。
そんな折に、会社を日本の某自動車メーカーにEXITすることになったんです。そこからは、EXIT先の企業をソフトウェアケーパビリティのある組織に変えるために、DX化推進施策の一部としてのアジャイル化を進めていくことになりました。
━━具体的には、どのような取り組みを行ったのでしょうか?
何度もスクラム研修を行ったり、スクラムチームの構造を整えてアジャイルコーチとしてサポートしたり。また、DX変革の成果は日本CTO協会で作っている『DXクライテリア』という定量的な評価指標に基づいて評価をしていたため、この指標をもとに、アジャイル以外にもゼロトラストなITインフラの構築などさまざまな取り組みを行いました。
その結果スコアが着実にアップしていきましたし、常に目指すところが解像度高く見えているような状態を作れたと思います。
今の自分にマッチした環境だと確信し、MIXIへの再入社を決意
━━ある程度大きな役目を果たしたタイミングで、みてねのプロダクトオーナーである笠原さんからお声がけされたのでしょうか?
KAKKA:そうですね。ひと段落つくかな・・というちょうど良いタイミングでした(笑)突然SNSで「ランチ行きましょう!」とメッセージをいただいて。前職のCEOと笠原さんの仲が良いので、こういうこともあるのか?と快諾しました。
そしたら「Sさん(みてねの前EM)も同席しても良いですか?」と聞かれたので、これはもしかするとそういうお誘いかなと。その時はちょっと話を聞いてみるか、くらいの感じでした。
━━入社の決め手はなんだったのでしょうか?
KAKKA:本当にマッチしたって感じです。まず僕の中で笠原さんは一緒に働いてみたい方の一人でした。0→1でプロダクトを作って着実にグロースさせている笠原さんの思考や行動に興味がありましたし、そばで働けるなら働いてみたいという気持ちを持っていました。
あとは、世界で戦えるような組織を日本にどんどん産み出すことで、日本の未来をより良くしたいという思いがあります。それがきっと自分たちの子どものためにもなると思っていて。そのためにも多様な組織フェーズにおける「良いモデル」をインプットしたかったので、既にある程度進化した状態の組織をより良くしていくというチャレンジをどこかで求めていました。
みてねはまさにそういう組織ですし、こういうポジションはなかなか出会えるものでもないので、みてねへのジョインを決心しました。
みてねを「進化した組織」だと感じた3つのポイント
━━先ほどみてねを「進化した組織」と表現されていましたが、具体的にはどんな印象を持たれましたか?
KAKKA:組織全体でモダンなカルチャーが徹底されているなという印象でした。特に印象を受けた3点をお話しすると、まず1つ目は情報の透明性についてです。みてね事業部内のナレッジシェアツールで限定公開機能を一切使わないようにされていて、一定数反対もありそうなのに、これがルールとして徹底されてるのは相当だと。
次に組織構造についてですが、過去に僕がさまざまなフェーズの組織で体験してきたことを、みてねでも既に体験されていました。その結果改善を続けて今の体制になっているので、組織構造の観点でもかなり進化していると感じました。
あとは自律的に動くという観点ですね。ボトムアップのカルチャーが強くて、ミッションを定め、 ミッション達成のための具体的な方法を定め、実際にスクラムで日々のタスクをこなすという動きを組織全体でやっている印象を受けました。
他にもマネージャー会議で話される内容の網羅性や、コーポレート機能のモダン化が進んでいて現場との統率がとれている、開発面で技術的負債がボトルネックになっている感じがしない、データドリブンな思考が浸透している・・など、色々言ってしまいましたが、全体的にかなり上手く機能している組織だと感じました。
さらなる進化を求めて、現在取り組んでいること
━━「全体的にうまく機能している組織」という印象だったとのことですが、組織をより良くするため、現在どのようなことに取り組んでいますか?
KAKKA:まずは、みてねプロダクト開発部にもスクラムのフレームワークを改めて導入しようとしているところです。チームとして向かうべき方向性をどのように指針化すればいいのかわからず迷っている状態だったので、スクラム研修を開催することにしました。
━━スクラム研修について、もう少し詳しく教えていただけますか?
KAKKA:みてねには、みてねの根幹となるデジタルアルバム機能に関わるDAD(Digital Album Domain)と、「写真プリント」など、みてね周辺のリアルサービスに関わるMERCH(Merchandising and Economics Domain)という2つのプロダクト組織があり、各チームに対して研修を実施しています。3日間ブロックして行う16時間ほどの研修です。学びの習熟度や定着率を高めるため半分以上がディスカッションなどのグループワークになっています。
━━実際にやられてみて、どういった感触でしたか。
KAKKA:まだ1チームしか実施していないのですが、研修直後から「これからどう動いていけば良いのか」という振り返り会議が開かれていました。そこから急激に変化しているように思います。
そもそも今まで役割を定義されていなかったスクラムマスターについての定義も明確になってきました。その人がちゃんと旗振りをして、開発者もプロダクトオーナーも含めた全員がワンチームとなっていろいろな変革活動も進めてくれています。それぞれが迷いがなくなった、前より良くなる気がするという前向きな気持ちを持ってくれていることもあり、、間違いなく良い方向に進んでいると思います。
こんな感じでより良い方向に進む組織が他にもあるかもしれないので、ここで終わりとするよりは、どこか他にも受け継いでいけたらいいですね。そういった文脈でMIXI社全体にも貢献できれば嬉しいです。
━━全社でもやって欲しいという声は上がりそうですね。他にも取り組まれていることはありますか?
KAKKA:さらに透明性を向上させるために、情報をオープンにするだけじゃなく、よりアクセスしやすい状態にしようとしています。たとえば、典型的なもので言うと、Slackのチャンネル名にプレフィックスをつけて見やすい形に整理するとか。どれが各グループの主幹となるチャンネルで、かつどんなコンテキストなのか、みたいな情報を一瞬で把握できるようにしました。
また、Slackのようなフロー情報だけじゃなく、ストック情報においてもアクセスのしづらさに課題があるなと思っています。今使っているツールだと情報をオープンにしていても、どこに置いてあるのかが分かりづらい。もちろん運用による課題もありますが、ほとんどがツールの課題だと感じるので、今後は別ツールに移行していく予定です。
「スクラムでは遅すぎた」と言える状態を目指して
━━これから、みてねプロダクト開発部をこんな組織にしていきたいというイメージや理想はありますか?
KAKKA:スタートアップの初期のチームみたいなイメージが近いと思うのですが、全員に圧倒的な当事者意識があって、今何が欠けていて誰がどう動けばいいかが阿吽の呼吸でわかっている。そして責任のなすりつけ合いも無く、互いにサポートし合える。特にプロセスを定義しなくてもそんな体制になっているような状態が理想です。
アジャイルな組織にも武道の習得フェーズである「守破離」があるとしたら、スクラムで定義されているようなセレモニーやアーティファクトのようなプラクティスの価値を感じて習得した上で(守)、だんだんとそれを破りより無駄を省いていくことで(破)、最終的には型がなくてもアジャイルなカルチャーが浸透しているような状態(離)になっていくんじゃないでしょうか。
━━型を必要としない、洗練された組織になっていくと。
KAKKA:そうですね。「スクラムでは遅すぎた」と言える日が来て欲しいですね。
━━その言葉、ぜひ聞きたいです!!開発スピードの向上も目標とするところですか?
KAKKA:質を担保する前提ですが、スピードはもちろん大事ですね。一緒に働くうちに、各プロダクト組織のPdMである中村さんも柿田さんも、現状のスピードでは遅いのではないか?と思い始めている気がします。開発者の能力がどうとかそういう話ではなく、あくまでも組織全体のアウトプットが顧客や経営に求められているものと比較して、の話です。
開発スピードの向上はなかなか難しい課題ですが、研修やコーチングなど短期的に取り組めることは頑張ってやっているところです。短期的に解決できない問題としては、そもそものリソースが足りていなかったので、来季は採用にも更に力を入れる予定です。その後もう一度オブザーブしてみて、それでもまだスピードが遅かったらシステムにボトルネックがある可能性もあるので、そこに目を向けていったりとか。まだそこは何とも言えないですけど。
━━これまでさまざまな組織を経験されてきたKAKKAさんにとっても、未知の領域に入っていくのかもしれないですね。
KAKKA:そうですね、基本わからないことばかりです。理論自体は世の中にあるのかもしれませんが、世の中に出ているのは上辺の情報ばっかりだったりするので。基本的にわからないというスタンスで、最後まで自分の目で見て課題を把握して、丁寧に施策を打っていきたいです。
━━ありがとうございます。最後に、この記事を見た方へひとこといただけますか?
KAKKA:「みてね」を通じて世界中の家族にこころのインフラを作りたい方、トップクラスにDeveloper Experienceの高い組織を目指したい方、ぜひ一緒に働きましょう!